・餃子（2000.09.08 ママ作） ※このお話しは、練馬の子育てミニコミ誌「TATSUJIN（2000.9）」から転載しました。 ケイトが小学校に入学して４ヶ月、本当に手がかからなくなりました。なんといっても送りむかえがなくなったこと。光が丘くらいだったら一人でキップを買って電車に乗って行きます。子供の成長には驚くべきものがあります。インラインスケートも、パパが「あと半年で技術的にケイトに抜かされる」と脅威を感じているくらい。私はもう負けています。そんな子供の成長過程で起きた出来事を忘れてしまわないように、私は日記をつけています。これはケイトが幼稚園の年長のときのお話しです。 １月の末、インフルエンザが流行している寒い冬の夜。ケイトはパパに「退場」を言いわたされた。「退場」は息子が悪いことをしたときの最終手段で、外に追い出されるということだ。今までも「退場」と言われたことは何度かあったが、実行に移されたことはなかった。 「ごめんなさい、ゆるして」と言うケイトにパパは動じず、「明日になったら帰って来ていい。今夜は外で一人で反省しなさい」と言った。はじめは許しを乞おうとしていたケイトも覚悟ができたようで、寂しそうに「明日帰って来るからね」と言って自分のおさいふを持ち（おさいふにはお年玉の残りが少し入っていた）、コートの上にハンテンを着て「退場」した。 しばらくして玄関の外が静かなので、ドアを開けて廊下を見たが、ケイトはいない。マンションのエントランスまで降りていったが、やはりいない。駐輪場にケイトの自転車がない。自転車で行ったのだ。ケイトが行くところは、すぐにわかった。毎日のように通っているひいおばあちゃんの家だ。お金を持っているのだから、途中セブンイレブンで何か買うはずだ。目白通り、千川通りを渡ったところにセブンイレブンがある。明るい店内に入るとアイスクリーム売り場にハンテン姿で哀愁をただよわせるケイトの後ろ姿があった。アイスを買おうか考え中の様子。近寄って私が「ケイト、おうちに帰ろう」と言うと、ケイトは「だいじょうぶ。オリジン弁当でごはんを買ったから」と、餃子２パックを見せた。「どこで食べるつもりだったの」と聞くと、「まだ考えていない」と言う。 うちに戻ると家の中は誰もいなかった。パパもさすがに心配してケイトを探しに行ったのだ。パパが帰って来たあと、３人はいっしょに夕食を食べた。ケイトは自分の買った餃子を２パック、つまり１２個をペロリと食べ、とても満足そうだった。